ニューマーク法の分類

    ニューマーク法は、斜面の地震時残留すべり変位の簡易算定法として広く用いられています。通常は、地震時の土のせん断強度は一定とする簡易法が用いられています。 しかしながら、土のせん断強度は

    • @排水条件と飽和非排水条件では初期せん断強度が異なる。
    • A排水条件では地震時荷重による有効直応力の変化に伴い、せん断強度が変化するが、飽和非排水条件では変化しない。
    • Bすべり変位に伴うひずみ軟化により低下する。
    • C飽和非排水条件では繰返し載荷に伴う損傷によって地震中に継続的に低下する。

    特に、緩い飽和斜面ではピークおよび残留強度が低い上に、上記Cの要因が著しくなるために流動的なすべりの危険性が高くなります。 ここで、土のせん断強度に与える上記@〜Cの要因を考慮したニューマーク法を下記のように分類し、称しています。

    【ニューマークO法】:地震時の土の排水せん断強度は一定とする簡易法

    【ニューマークS法】:上記Bを考慮する方法(排水条件)

    【ニューマークD法】:上記Cを考慮する方法(飽和非排水条件)

    【ニューマークSD法】:上記BおよびCを考慮する方法(飽和非排水条件)

      図 ニューマーク法の分類  
     

    ※画像はクリックすると拡大します。

     

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    ニューマークD法の適用

    ニューマークD法には、『詳細』と『簡易』の2種類があります。暫定的には対象となるため池の堤高および想定震度の違いによってどちらかに分類されます。 詳細法は、非排水繰返し三軸試験等を実施して、堤体土の地震動による強度低下を考慮した解析手法です。また、簡易法は、堤体土の細粒分含有率Fcや塑性指数Ipなどの情報から堤体土の種類に応じた標準劣化モデルを用いて解析する手法です。

    • @堤高10m以上、想定震度6強以上 ⇒ ⇒ ⇒ 詳細ニューマークD法
    • A堤高10m以上、想定震度6強未満 ⇒ ⇒ ⇒ 簡易ニューマークD法

    詳細ニューマークD法の解析概要

    詳細ニューマークD法の変形計算フローは、以下の通りです。

    ステップ1:初期条件の設定

    ため池堤体および基礎の2次元断面形状、土質定数、水位線、地震波形等を設定する。また、堤体を代表する試料を用いて非排水繰返し三軸試験等を実施し、液状化強度曲線およびせん断強度低下モデルを作成する。

    ステップ2:堤体内の加速度と応力の時刻歴の算定

    土の剛性と減衰のひずみ依存性を考慮した等価線形動的応答解析(全応力法)を実施して、堤体内各場所での応答加速度と作用応力の時刻歴を求める。


    ステップ3:初期臨界円弧すべり面の探索

    土の初期非排水せん断強度を用いて、堤体内の震度が一様として円弧すべり安定計算を実施して、安全率Fs=1.0での降伏震度kyが最小となる臨界すべり面を探索する(スライス法)。


    ステップ4:せん断強度の低下過程の算定

    円弧すべりの各スライスに対して、累積損傷理論に基づいて、非排水繰返し荷重(ステップ2の結果)による損傷度およびせん断ひずみの時刻歴を計算した上で、せん断強度の低下過程を求める。


    ステップ5:臨界円弧すべり面の再探索

    ステップ4のせん断強度を用いて降伏震度の時刻歴を求め、滑動開始時刻を算定する。次に、滑動開始時刻まですべり面位置の変動は小さいという仮定の下で、ステップ4の低下強度を用いて臨界すべり面を再度探索する(強度低下を考慮したステップ3の実施)。臨界すべり面に有意な差がなくなるまで、ステップ4〜5を繰り返す。


    ステップ6:滑動変位量の算定

    ステップ5で得られた臨界すべり面に沿って、ステップ4の強度低下を考慮して、従来のニューマーク法と同じ原理に基づく累積滑動変位を計算する。


    詳細ニューマークD法による変形計算フロー
    詳細ニューマークD法による変形量の算定


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    解析事例

    ステップ1
    ステップ2
    ステップ3
    ステップ4
    ステップ5
    ステップ6

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    簡易ニューマークD法の解析概要

    簡易ニューマークD法の計算フローは、以下の通りです。

    ステップ1:初期条件の設定

    ため池堤体および基礎の2次元断面形状、土質定数、水位線等を設定する。併せて、内閣府が提示している地震動やJ-SHIS のサイトからため池近傍の地震動を抽出し、工学的基盤から堤体下面までの地震増幅を考慮して、堤体下面への入力地震動を設定する。また、標準劣化モデルに基づいて、粒度特性等から堤体材料の液状化強度曲線およびせん断強度低下モデルを推定する。


    ステップ2:堤体内の地震増幅度の算定

    建設省河川局監修「フィルダムの耐震設計指針(案)」に示されている修正震度法等に基づいて、堤体内の増幅率の分布を推定する。


    ステップ3:初期臨界円弧すべり面の探索

    土の初期非排水せん断強度を用いて、堤体内の震度が一様として円弧すべり安定 計算を実施して、安全率Fs=1.0での降伏震度kyが最小となる臨界すべり面を探索する(スライス法)。


    ステップ4:せん断強度の低下過程の算定

    円弧すべりの各スライスに対して、累積損傷理論に基づいて、非排水繰返し荷重(ステップ2の結果)による損傷度およびせん断ひずみの時刻歴を計算した上で、せん断強度の低下過程を求める。


    ステップ5:臨界円弧すべり面の再探索

    ステップ4のせん断強度を用いて降伏震度の時刻歴を求め、滑動開始時刻を算定する。次に、滑動開始時刻まですべり面位置の変動は小さいという仮定の下で、ステップ4の低下強度を用いて臨界すべり面を再度探索する(強度低下を考慮したステップ3の実施)。臨界すべり面に有意な差がなくなるまで、ステップ4〜5を繰り返す。


    ステップ6:滑動変位量の算定

    ステップ5で得られた臨界すべり面に沿って、ステップ4の強度低下を考慮して、従来のニューマーク法と同じ原理に基づく累積滑動変位を計算する。


    簡易ニューマークD法による変形計算フロー

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    ため池等土構造物の耐震性評価法

    ため池等の土構造物に大規模な地震動が作用すると、水位線以下の飽和土層では強度低下および剛性低下が進行し、結果としてすべり変形や流動(沈下、側方流動)が複合的に発生します。  現状での1つの考え方として、このような複合的な変形モードを回転変形モードおよび液状化流動による変形モードの合成ととらえる手法が挙げられます。すなわち、回転変形モードに対してはニューマークD法を適用し、液状化流動による変形モードに対しては液状化流動解析手法(ALID等)を適用するというものです。

    大地震時の土構造物の変形モード
    詳細ニューマークD法等による変形計算フロー

    解析事例

    ステップ1
    ステップ2
    ステップ3
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    ステップ5
    ステップ6
    ステップ7

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